栃木県はこのたび「都道府県魅力度ランキング2020」で最下位に輝きました~(パチパチ★)。
「だって栃木って何もないもんね」と思ったそこのアナタ、忘れていませんか?50年連続で日本一に輝く作物があることを!

今回は、全国で唯一のいちご研究機関「栃木県農業試験場 いちご研究所」に潜入。一体何をしているの?いちご小百合が調査してきたベリー!

ここが噂のいちご研究所か……。栃木県農業大学校のいちご学科を取材して以来、この研究所の存在が気になって夜も眠れなかった(※)。

(※)栃木県農業大学校には、いちご研究所と連携した「いちごゼミ」が設置される。

寝不足で目はいちごのように充血し、いちごを食べすぎて太る夢も見た。それもすべては今日のためにあった試練。そう!遂にいちご研究所に乗り込む日が来たのよ!!

2021年初取材!今年も楽しく農家さんを応援していきましょう♪

るうかちゃん!何を呑気なことを言っているの!今日は危険が伴う取材なんだから、気持ちを引き締めて!

え?

いちご研究所は県が管轄する組織よ。きっと多くの陰謀があるはず。いつ身柄を拘束されても不思議じゃないから、気を引き締めて取材に臨みましょう。

(ま~た変なこと言ってる。まあいいや、面倒臭いから話を合わせよう)そうですね!早速突入しましょう!

OK!いざ突入!

研究所に潜入だベリー!

いちご研究所にようこそ!

あなたは!?

岩崎慎也さん
栃木県農業試験場 いちご研究所
企画調査担当 特別研究員

よ、よろしくお願いしま……ぷっ!
(まさかの同じいちご仕様!敵の気を緩ませる作戦か?笑うな小百合……!)

それでは、早速いちご講義を開始します。

キーンコーンカーンコーン♪

栃木のいちごはスゴイんだべ!

ご存知のとおり、栃木県のいちごの収穫量は全国1位です。割合的に見ると、総収穫量の15%を栃木が占めています。収量はもちろん、作付面積も1位、単位面積あたりの収量も1位です!

 

同じ面積でも他県よりたくさん採れる理由は、いちごを生育するのに適した要素が揃っているからです。気候、それに合った品種を開発する力、農業者のレベルの高さ……色んな要素が合わさった結果なんですね。

ぬぬ!イキナリ圧倒的王者感!

いちご研究所って、ナニしてるんだべ?

そもそも、ココでは何をしているんですか?

「いちご王国」のさらなる発展を目指して、新品種を開発したり、生産・流通・消費を網羅的に試験研究したりしています。

栃木のいちごは50年以上に渡って日本一に輝いている非常に重要な作物なので、栃木県は全国で唯一いちご専門の研究機関を設けています。現在は13名のスタッフが一丸となり、日夜研究に励んでいます。

この研究所の開設は2008年ですが、栃木県のいちごの品種開発は1969年から始まっています。この50年間で10品種が開発されました。

ほう。

突然ですが、ここでクイズです♪1985年にオリジナル品種「女峰」が開発されましたが、その後継品種として1996年に品種登録されたいちごはど~れだっ?

  1. 紅ほっぺ

  2. とちおとめ

  3. さちのか

えっ!べ、紅ほ~っぺ♪(お馴染みの節で)

ブッブー!正解は「とちおとめ」です。

実は栃木のいちご、1度福岡に抜かれたことがあったんです。そこで、日本一を取り戻すべく世の中に発表したのが「とちおとめ」。今では栃木県だけでなく、全国各地で栽培されています。

栃木のいちご栽培、深い歴史があるっぺよ!

ここで、栃木県のいちご栽培の歴史を見てみましょう。

(昭和20年代)

 

(昭和30年代)

へえ。栃木のいちご栽培は昭和20年代から始まったのか~。

はじめは露地栽培でしたが、昭和30年代にはトンネル栽培が普及しました。黄金期の昭和40年代になると、現在のようなハウス栽培が普及しました。

(昭和40年代)

栃木の冬は寒いですが、ハウスのおかげで「寒さ」という弱点を克服し、出荷開始時期も早まりました。ここから日本一への躍進が始まり、品種開発に着手し出しました!

ドキドキ。

さらに昭和50年代になると、「麗紅」という品種の促成栽培が普及し、出荷時期が2月から1月へ早まります。その後「麗紅」を超えたのが、栃木県初代のレジェンドいちご「女峰」です。
この頃からクリスマスの時期に出荷できるようになり、クリスマスケーキにいちごが載るようになりました。

(昭和60年代)

いちごのショートケーキって、昔はクリスマスになかったんだ。

そうなんですよ。そしてその後「女峰」を超える「とちおとめ」が普及し、栃木県は圧倒的ないちごの大産地になりました。平成26年には「スカイベリー」、そして現在出願中の「とちあいか」も誕生しています。

現在は、昭和40年ごろに比べると作付面積は半分に減りましたが、技術開発と品種開発のおかげで収穫量はぐんと伸びているんです。

ナンバーワンには理由があるっぺよ!

でも、どうして栃木はそんなにいちごがスゴイんですか?

栃木県の気候や日照条件に適した品種をつくっているからです。例えばとちおとめを気候の異なる地域でつくったとしても、条件が異なるのでうまく育たないんですよ。

そして、適正価格で買ってくれる東京の市場が目の前にあることも大きいです。ウォーターカーテン(※)などの技術が普及していること、常に安全な親苗を買える「いちご無病苗供給体制」が整っていることも、大きな理由ですね。

(※)ウォーターカーテン:ハウスのビニールを二重にして内張りカーテン上に地下水を散水することで、ハウス内をあたたかく保つ技術のこと。これがあれば、冬でもボイラー無しでの栽培が可能に。

ここで、またまたクイズです!いちごは果物でしょ~か?野菜でしょ~か?

はい先生!そう聞くってことは、野菜です!

半分ピンポ~ン♪実は、どっちでも良いんです。農林統計では野菜の分類、市場では果物として扱われています。「果実的野菜」なんて風に言われていますね。ま、美味しければどっちでも良いんですけれどね♪

へ~!初めて知りました!

いちごの1年は14ヶ月?

いちごって、どんな風に育つんだろう?

実は、いちごの1年は12ヶ月ではなく、14~15ヶ月あるんですよ。

どういうこと?

一言で言うと、収穫期がのびているってことです。いちごは4月~5月で苗を増やして、6月~8月で苗を育てて、9月~10月でハウスに植えていきます。そして、収穫は11月~5月くらいまで続きます。4月と5月はダブるので、いちごの1年は14ヶ月と考えられるんです。

なるほど~。ん?資料に書いてある「人工的に秋の季節にする」って、なんですか?

本来いちごは初夏に実る果実ってこと、ご存知ですか?それよりも収穫時期を早めるために、人工的に季節を操作するんです。

夜の時間帯に苗を冷やした倉庫に入れると、苗が「あれ?もう秋が来ちゃったのかな。花芽をつける準備をしなくちゃ!」と勘違いして、成長が促されます。これを「夜冷育苗(やれいいくびょう)」と言います。

だますんだ……(笑)。

花芽がついたら、今度はあったかいハウスに入れます。すると「あれ?もう春が来ちゃったんだな~」と勘違いして、花を咲かせて実を成らせてくれる。こうすることで、通常よりも早い11月ごろから採れるようになるわけです。

いちごをたくさん育てている農家さんにとっては、グループに分けて収穫期をズラすことができるので、労働力を均衡にできるメリットもあります。

“収穫期間をいかにのばすか”が品種開発の要ですが、いちご研究所が開発した技術のおかげで、年間の半分以上が収穫期間になりました。収穫量は昔に比べると3~4倍になり、非常に収益性の高い作物へと進化していったのです!

カッコイイー!

いちご研究所は、新たな「品種開発」はもちろん、いちごの生育特性を利用した「栽培技術開発」も行っています。「夜冷育苗」のような技術を開発する一方で、技術なんて使わなくても美味しくたくさん育つ品種も開発しているんです。

ちなみに、夜冷育苗ができるのも品種開発のおかげです。昔の品種はガンコなので、「俺はこんなことにはだまされねぇ!」って、だまされてくれないんですよ(笑)。今の品種は聞き分けが良いから、「これくらい寒ければ秋ってことにしとくわ~」って思ってくれるんです(笑)。

かわいい♪品種開発と技術開発を組み合わせることで、どんどん進化しているんですね♪

品種開発は気が遠くなるっぺよ!

品種開発ってどうやるんですか?超ハイテク技術なのかな。

非常に地道な方法でやっています。例えば、「とちおとめお母さん」と「スカイベリーお父さん」を掛け合わせるとしたら、こんな手順です。

  1. 受粉作業(交配)をする(毎年70~100種類の組み合わせの交配)

  2. 実をつくる

  3. 1個1個の実から種を採る(200~300の種を採る)

  4. 1粒ずつ手播きして、発芽したら一株ずつハウスに植え替える

    株の一つ一つに「とちおとめ×スカイベリー1番」「とちおとめ×スカイベリー2番」と番号を振って、経過を観察・選抜していきます。色んな品種同士の色んな掛け合わせを何十通りも考えていくので、多いときには一万株くらいになります。

果てしない……。でも、美味しい品種同士を掛け合わせれば、どんどん美味しい品種が誕生しそう♪

それが品種開発の難しいところで……。良い親同士を掛け合わせても、親を超えるのは難しいんです。美男美女の芸能人同士が結婚したからと言って、必ずしも親を超える子供が生まれるワケじゃないですよね?

確かに(笑)。

でも中には奇跡の子もいるので、たくさん掛け合わせながら奇跡の子を探しているんです。いちごは1年間に1作しかできないので、5年間の選抜を繰り返しても、品種候補として残るのは1つあるかないかのレベルです。

そして、例え「これは良いぞ!」というものができても、既存のチャンピオンいちごを越えなければ、ボツになります(涙)。

審査の最終段階では、実際に農家さんにつくってもらうんですけれど、農家さんが「とちおとめの方がよかったべよ」って言ったら、そこでボ~ツ!(笑)

……。

……ってことを、永遠と50年やってきているんです……。交配から登録出願までは約7年かかりますが、7年かけて開発したすべての品種が世に出るわけではない。
味はもちろん、形・収量性・輸送適正などもクリアしなくてはなりませんから、メジャーデビューできるいちごはごくわずかです。

今売られている品種って、スーパースターなんですね……!

研究員は1年で一生分のいちごを〇〇するンダ!

開発品種の選抜って、どうやってるんですか? 

最初から糖度などを機械で測るとキリがないので、最初は人のベロメーターを使って一気に選抜します。研究員はとにかく食べて食べて食べまくる!

え、まさかの人の味覚!?

日本人が1年間に食べるいちごは約50粒と言われていますが、うちのスタッフは年間約4000個のいちごを口に入れています。平均の80倍食べるので、一生分のいちごを1年でカジル計算になるんです!

(んな……!ここで「かじる」と「カジル」を掛け合わせて来た!オチを付けるとは、くう~負けた!)

……岩崎さん、変に疑ってすみませんでした。私たちが美味しいいちごを食べられるのは、研究所の皆さんの汗と涙のおかげだってことが良く分かりました。

(え?疑ってたの?何を?)あ、ありがとうございます。これからも「いちご王国・栃木」を支える良い品種の開発に向けて、スタッフ一丸となって頑張ります♪

研究所の敷地をグルリ

敷地、結構広いですね。

全体で10へクタールくらいです。さて、ここはいちごの1次選抜ハウスです。
ハウス内の気温は昼間で24~25℃、常春の状態をつくっています。

1つ1つに名札が立ってる。ミツバチがたくさん飛んでる~!ぶんぶん♪

彼らは受粉用のミツバチです。5000~6000匹飛んでいますよ。

これが、先ほどお話しした「夜冷育苗」のための夜冷ハウスです。
中の気温は13℃くらいに設定されています。

いや~面白かった!いちごとして生きる者として、勉強になりました!岩崎さん、今日はありがとうございました!

また遊びに来てくださいね~♪

栃木はやっぱりナンバーワンだベリー♪

小百合さん、何しているんですか?

こんなに魅力的な研究所で特産品の開発を頑張っているなんて、栃木県ってめっちゃスゴくない?!なのに何で魅力度ランキングが最下位なのよ!撤回を求める資料をつくっているの!

あ~、そうでしたね(笑)。私も最下位には納得いかないです。私たちカジルがもっと栃木の魅力を発信していかなくちゃ♪

そうだよね!2021年もガンガン取材して、発信していこー!

皆さん、今年もよろしくお願いしま~す!

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▼栃木県農業試験場 いちご研究所

http://www.pref.tochigi.lg.jp/g61/

▼記事中で紹介した「栃木県農業大学校いちご学科」の取材記事はこちら

「つ、ついに!栃木県農業大学校に「いちご学科」できるベリーー!」

https://kajiru.world/article/noudai-itigo

この記事を書いた人

小百合:「住食人」がテーマのインタビューライター。今は埼玉県在住だが、以前栃木県に住んでいたことがあり、今でも頻繁に足を運ぶほど栃木愛が強い。2019年7月からカジルに参加。趣味はダイエット(再コミット中)、好きなものは人とお酒。https://www.instagram.com/an_sayu/