こんちは。カジル編集部です。カジルに掲載されている農家さんは100件を超えて20代から60代老若男女問わず、北から南まで栃木県の農家さんを紹介しています。今回は、20代で就農してアスパラガス農家となった姉妹のところに行ってきました。
宇都宮市中心部から車で約50分。真岡市に到着しました。こちらがアスパラガスをつくるみらい農園さんの姉妹です。
【左】妹:恭子(キョウコ)さん / 【右】姉:未来(ミキ)さん :「今日は取材よろしくお願いします!」
:「よろしくお願いします」
:「カジルさん、今日は仕事めちゃくちゃ忙しかったですよー」
:「春芽のシーズンで取材直前までアスパラガスを収穫していました」
:「忙しいところスミマセン。今日はカジルの特集記事の取材なんですが……着飾らずありのままインタビューに答えて頂けませんか?」
:「カジルさん、うちら、いつも通りだから大丈夫ですよ(笑)」
:「(笑)」
:「まずは、みらい農園さんについて教えてもらえませんか?」
:「アスパラガスをつくっています。品種はガリバー、面積は30アール、現在ハウスは13棟です」
ため息が出るほど凛としたアスパラガス。:「メンバーは姉と私、そしてパートさんが1名。お父さんそしてお姉ちゃんの旦那さんも手伝ってくれています」
:「オヤジは自分でとうもろこしづくりをしているので、サポート程度です。経営も別にしています」
:「では、どうやってアスパラガスづくりを学ばれたんですか?」
:「アスパラガスづくりは研修を受講したり、同じアスパラガス農家の方に教えてもらいました」
:「技術は自分のもんだ見せないぞ的な一子相伝かと思いましたが、アスパラガスをみんなで盛り上げていこうという農家さん達なんですね!」
:「そうですね!」
:「では、数ある農産物の中で、アスパラガスを選んだ理由はなんですか?」
:「栃木県で推奨作物だったのと、『植えたらずっと収穫できて楽かな』と思ってアスパラガスに決めました(笑)」
:「マジですか(笑)。アスパラガスづくり、実際につくってみて植えたらずっと収穫できて楽でしたか?」
:「いえ、メッチャ大変でした(笑)」
:「1年目は収量もなく、できたアスパラガスは細くて。肥料や機材の購入でお金がでていくいっぽうで。さらに2年目は毎日のようにお姉ちゃんとケンカをしていました」
:「アスパラガスづくりの方向性がケンカの原因ですか?」
:「それもありますが、それよりお金がなくなっていくこと最大の原因ですね」
:「カリカリしちゃって、お金がないとケンカしますね。特に夏場はアスパラガスの収穫作業で繁忙期になるんですが、価格が安いんです。お金がないのに忙しい時をどう乗り越えるかって今思うと大切だと思います」
:「リアルな話しですね。未来さんは会社員から、恭子さんは公務員からアスパラガスづくりをはじめたわけですが。実際に就農してみて農業のイメージはかわりましたか?」
:「オヤジを見ていたので農業が大変なんことはわかっていました。ただ、これほどまでに忙しいとは想像していませんでした」
:「農業って想像しているよりもやることや考える事も多くて忙しいんですよね」
:「あっ。ストーレートな質問ですが、農業って儲かりますか?」
:「農業は儲かると思っていましたが、それ相応の努力をしないと儲かりません」
:「実は就農する前に、オヤジが全部の通帳を見せてくれたんです」
:「農業歴46年のお父さんの通帳をですか!?」
:「はい。通帳を開くと…土日もなく毎日働いているのに、こんななの?と。オヤジには申し訳ないけれど笑ってしまいました(笑)」
:「現実を通帳の数字で見せられるなんて…これ以上はないですね。その数字を見てもアスパラガスをつくろうと思った理由はなんですか?」
:「アスパラガスなら大丈夫だと思いまして(笑)」
:「えっ?それだけですか?」
:「そうです!アスパラガスなら大丈夫って!」
:「ちなみに二人の後ろにあるのは、アスパラガスを重さで選別する選別機械ですよね?」
:「はい、そうですよ」
:「アスパラガスづくりをはじめてまだ4年程かと思いますが、この選別機は随分と年期がはいってるようの気がしますが…」
:「この機械は、ヤフオクで落札したんですよ。お金がなくて新品を買うことができなかったので(笑)」
:「たしか、12万円で落札しました」
:「…お金の面、相当苦労されていたんですね」
インタビュー中、姉妹の笑顔が途絶えることがありませんがここまでくるには相当な努力や苦労を重ねたんだろうなと感じるカジル編集部。そうなってくると、みらい農園さんのアスパラガスと圃場を見たくなりお願いしちゃいました。:「みらい農園さんのアスパラガスを見せて頂けませんか?」
:「私たちのアスパラガスでよければどうぞ(笑)」
取材のOKを頂き、長靴に履き替え圃場へ移動することに。
作業場から車で2分で到着、整理整頓が行き届いた圃場です。早速、ハウスの中に入らせて頂きました。:「おっー立派なアスパラガスがたくさんありますね!」
:「そうですか(笑)ありがとございます」
:「収穫はどんな感じですか?」
:「こんな感じで一本一本手作業で収穫します」
:「態勢が辛そうです。ちなみに、みらい農園さんのめざすところはありますか?」
:「なんだろう、余裕をもって仕事をすることかな(笑)」
:「就農する方が増えてきていますが、アドバイスを送るとしたらなにかありますか?」
:「アドバイスですか!?私達そんな立場ではないんですが…(笑)。農業で食べていくには3年間必要だよってことかな」
:「3年間がんばって農産物をつくるということですか?」
:「それは当たり前ですね、収入よりも支出が多くお金が3年間もつか(笑)」
:「いくら農業が好きで志を立てたとしても、お金がなければ続けていくことはできませんよね」
これが就農して今も続けられている農家さんの現実なんだと思うカジル編集部。:「恭子さんはどうでしょうか?」
:「周りからのアドバイスは素直に聴くことだと思います」
:「それはなぜですか?」
:「自分はこういうやり方でつくる、一人でやってやるんだと強い気持ちは大切なんですが。慣れない作業や予期せぬ自然災害、そして農産物はすぐにはできません。病気への対処方法が間違っていても本人は気づきません。そういった時に周りの方からのアドバイスをいかに素直に聴けるかは大切だと思います」
:「途中で倒れてしまうと、もちろん本人の為にもならない、ましてや新設したハウスや借りた土地は誰が管理するか。負の遺産を残す可能性もありますよね」
:「就農して、こんなに人から助けられるなんて思いませんでした。仕事を中断して、わざわざ圃場へ見に来てアドバイスをくれたり、同業者にも関わらず圃場を見せて栽培ノウハウを伝授してくれるアスパラガス農家さんもいるんですよ」
:「今の私たちがあるのも、たくさんの周りの方のおかげだと思っています」
:「未来さん、恭子さん今日はありがとうございました」
:「カジルさん、今日はありがとうございました」
【取材を終えて】
圃場だけでなく機械も作業場も整理整頓が行き届いている、みらい農園さん。農家さんを取材することの多いカジル編集部は、美味しい農産物をつくる農家さんの共通項は整理整頓が行き届いていること。ストレートな言葉と前に進む力と勇気のある未来さん、笑顔がいっぱいでバランスを整えていく恭子さん。二人のバランスがとてもよくて、きっと、この姉妹がアスパラガスの未来をつくっていくんだろうなと思いました。最後になりますが、お勧めの食べ方は、茹でたアスパラガスへ塩を少し加えたゴマ油をかけて食べることだそうですよ。