カジル読者の皆さん、ついにこの日がやってきます。半世紀以上に渡っていちごの生産量全国1位を誇る「いちご王国」栃木県。栃木県農業大学校に、2021年、待望の「いちご学科」が開設されるんです!(パチパチパチ☆)

いちご学科って、一体どんな学科なの?カジルライターの小百合が突撃してきたベリー!

~栃木県農業大学校~

(ついにこの日が来たわ……!去年吉村さんのいちご農園を取材してからというもの、私の頭の中はいちご一色。どうしたらいちごになれるのか、それだけを考え続けた人生でした……。

※吉村農園取材(2019年12月)

(とにかくいちごを食べまくり、身の回りはすべて赤で統一し、毎月15日には月に祈りを捧げたけれど、ダメだった。でも諦めなくてヨカッタ!だってだって、この日が来たんだもんっ……!)

(念願のいちご学科開設!ここで学べば、憧れのいちごになれるはず。ああっ!嬉しすぎて、私どうすればいいのっ……!?)

小百合さあ~~~ん!

こんにちは、小百合さん。今日の取材は大学!珍しく真面目な取材ですね。

一応、いつも真面目にやってるんだけど?

(……あれで?)ふふっ☆さっそく行ってみましょう♪

いざ校舎へ

小島さん、本日はよろしくお願いいたします!

小島博さん
栃木県農業大学校 教務部 いちご学科準備担当 主任教授

小島さんも農家出身なんですか?

はい、栃木県南の農家の次男です。私は栃木県の職員なので、以前は農業改良普及員として農家の指導、改良のお手伝い、担い手育成をしていました。現在はこちらの主任教授として、いちご学科開設の準備をしています。

(しまった、主任教授か……。めっちゃエライ方なのに無邪気に「オソロでいちごマスクつけて下さいっ♪」ってお願いしてしまった……)

※小島さんありがとうございました。

100年以上の歴史、実践的な農業を学ぶ学校

えっと、栃木県農業大学校はどんな学校なんですか?

農業の知識と実践的な技術を学ぶ学校です。明治38年に芳賀町で誕生し、110年以上の歴史があります。今は県立ですが、最初は私学として始まったんですよ。

現在の生徒数は、1年生と2年生合わせて127人。昔はそれこそ農家の後継者ばかりが集う学校でしたが、今は非農家の出身で農業をやってみたいという人も増えてきました。

生徒は皆さん栃木県内の方なんですか?

ほとんどが県内の方です。実は農業大学って全国にあるのですが、うちは栃木県立の大学なので、卒業後に県内で就農する人を育成することを目的としています。
新設される「いちご学科」も同様で、県外からの応募も可能ですが、卒業後は栃木県内で就農することが前提です。

(県の税金だもんね……。)今はどんな学科があるんですか?

現在は本科として「農業経営学科」「園芸経営学科」「畜産経営学科」の3つがあります。いま在学中のいちごを学びたい生徒は「園芸経営学科」の野菜専攻にいます。この本科は2年制ですが、文科省の専修学校の扱いになるので、卒業後に他大学の3年生として編入することもできます。


そして、来年(2021年度)「いちご学科」が新設されることに伴い、学部を設置します。これまであった3つの学部は「農業生産学部」の中の「農業総合学科」「畜産学科」に集約し、新設の「いちご学科」は「農業経営学部」に属する学科にします。

※いちご学科特設HPより

ここでのポイントは、いちご学科のターゲットは高卒生ではなく、社会人だということです。

???

あ……。大学って、学問だけでなく人間形成の場でもありますよね。「農業生産学部」は、高校を卒業したばかりの生徒がターゲット。ひとつの作物に限らず農業全体について幅広く学んだり、人間形成も視野に入れたりしたカリキュラムなんです。1年次は全寮制で、先生や仲間と密接に生活する中で様々なことを吸収します。

昔は農家の後継者は高校を卒業したらすぐに実家を継いで就農していましたが、今はすぐには就農せず、一度一般企業に就職する生徒も多いんですよ。組織として農業をやっている会社に雇用就農したり、農協に就職したりする人もいます。そういう意味では、農業の幅広い担い手を育成している学校と言えますね。

ふむふむ……。

一方、新設の「農業経営学部 いちご学科」は社会人がターゲット。すでに人間形成は終わっていて、とにかくいちごのことだけを集中して学びたい人です。いちご学科のミッションは、卒業後すぐに栃木県内で就農して、いちご農業の即戦力ルーキーになる人を育てることなんです。高校を卒業したばかりでも、熱意があればこちらへの入学も可能です。

なるほど~!じゃあ成熟した大人の私が入学するとしたら、いちご学科の方ですね♪

実践メインの生きたカリキュラム

いちご学科の構想って、いつからあったんですか?

栃木は言わずと知れたいちご王国です。でも、昔は2,000戸以上あったいちご農家も、2019年度には1,862戸まで減少しているんです。(※2019年度栃木県調べ)

日本一を維持していくためには、これまで以上にエースとなり、リーダーとなる人を育てていく必要があります。そこで様々な方々の努力により約3年の準備・検討期間を経て、念願の創設となったんです。

構想中は、農家さんの生の声を聞いたりしたんですか?

はい。特に栃木県に新規参入した農家さんには入念にヒアリングしました。どんなことを苦労しているか、どんな支援が必要かを聞いて、カリキュラムに反映しています。

カリキュラムは、2年間を通して実践教育がメインです。1年次は学内で実習を含めてみっちり勉強し、2年次は現地実習が主体になります。週何日かは受け入れ農家さんのところへ実習に行ってもらいます。

究極の実践は農家の現場ですもんね……。

そうですね。その他にも、実践教育として県内のエースやレジェンド農家から学ぶ「いちご経営実践論」、栃木市にある国内唯一の「いちご研究所」などと連携した「いちごゼミ」を用意しています。これは、いちご栽培の技術と知識を県内最高技術を持つ研究員と一緒に実証していく課題解決学習です。

例えば「どうして生育がよくないんだろう」といった悩みがあるならば、それに対する色々な仮説を立てて、トライ&エラーを繰り返しながら実証していきます。学科メンバーの10名がそれぞれの課題に取り組むので、シェアすれば10通りのことが学べるわけです。

すごーい!研究所を含め、オール栃木で育成していくんですね!

経営論も!いちごの即戦力を育てる

パンフレットでは「経営者」というワードが目立ちます。経営論も学ぶんですか?

はい。座学ではビジネスとしての経営論、いちごビジネスの特別講座を用意しています。農家は作物をつくるだけでなく、人を雇用したり、面積を増やしたり、労務管理をしたり、最新設備を入れるための資金調達をしたりします。資金繰りの力や先見性がないといけないんですね。

今までは知恵と経験でやって来られたかもしれないけれど、これからはそうは行きません。技術を基にマネジメントしていかなくてはいけないんです。

栃木県は、いちご農家の戸数は減っても日本一はキープしています。これは各農家が経営者として自覚を持ち、面積や売上を伸ばしてきた結果です。経営が成り立たないと長続きしないので、これからますます経営者としてのマネジメント能力が必要になってきます。そこで、そんな人材を育成するのがこの「いちご学科」です。

定員は10名と少人数に設定しているので、入学試験で選抜して、少数精鋭として大切に育てていきます。農業機械士やけん引免許など、農業に必要な資格も学内で取得できますよ。

……至れり尽くせり!

だからこそ、「いちご経営者になる!」という強い意志を持った人に入学していただきたいです。農家の子供さんだから成功するとは限らないし、ゼロからでも情熱があれば成功しますから。実践授業ばかりなので、「周りがやってくれるだろう」という受け身の姿勢では身に付きません。目的を持って、どんどん質問して、自ら学べる人に入学して欲しいですね。

いちご学科のスタートが今から楽しみです!

この学科は、今の技術を若い人たちに伝えていく懸け橋になるはずです。単純にいちごは美味しいですし、食べると幸せな気持ちになりますよね?いちごを通して幸せを届けることを大事にして、商品価値を高める努力を続けていけば、栃木のいちご農業はますます発展するはずです。そのためには若い人たちのアイデアも必要ですから、そこは卒業生に期待ですね。

なんだか胸が熱くなりました~!小島さん、最後にひとつ聞いてもいいですか?

なんでしょう?

いちご学科を卒業したら、私、いちごになれますよね?!

……いちごにはなれません。(キッパリ)

……。

では、せっかくなので敷地内をご案内しますよ。

あ……ありがとうございます……。

ディズニーランドと同等!広大な敷地面積

敷地内には、教育研修棟、体育館、食堂、本科の寮があります。そしてなんと言っても広大な農地ですね。敷地全体は約50ヘクタールあり、ディズニーランドと同じくらいの広さです。敷地内でトラクター免許も取れますよ。

(〇ッキーも居るのかなあ?)

右が本館、奥が体育館です。

こちらは教育研修棟です。

本当に広い……ゼエゼエ。

これは高設栽培という、溶液を使ったいちご栽培です。

奥のグレーのハウスは「夜冷ハウス」。いちごの一部の苗を夜冷処理して、花芽ができるのを早めるための施設です。こうしてクリスマスに合わせて出荷の時期をズラしているんですよ。

へ~!需要が多い時期に出荷できるよう調整しているんですね!

いちご学科用に、これからさらに最新施設をつくる予定です。ここで仲間と切磋琢磨して、夢を実現させて欲しいですね。

そうですね~!小島さん、じっくり教えて下さってありがとうございました!

いちごになれなくても。

さ、小百合さん。いちごになれないって分かったことが、そんなにショックだったんですか?

いえ、るうかちゃん、そうじゃないの。私、いちごのこと全然分かってなかった……。こんなにも奥深いということも、いちご農業の未来をこんなにも真剣に考えている人が居ることも。それを恥ずかしく思ってしまっただけなの。決して落ち込んでいるワケじゃないの……。

(めっちゃ落ち込んでるけど……。)で、でも、このいちご学科に熱意のある若者が集まって、栃木のいちご農業がますます繁栄すると良いですね♪

はい!心底それを願います!で、るうかちゃん、今日の取材は何点だった?

……15点♪

い、いちごだけに……!?

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未来のいちご農業への希望を見出したのも束の間。るうかとの取材2回目にして最低点数を出された小百合。果たしてモチベーションは保てるのか?!

次回もお楽しみに♪

※途中ご紹介した吉村農園取材(2019年12月)の記事はこちら

https://kajiru.world/article/ichigo-picking-hawto2019

取材をした栃木県農業大学校について

▼栃木県農業大学校HP

http://www.pref.tochigi.lg.jp/g63/index.html

▼学生募集中!「いちご学科」特設サイトはこちら

https://www.agrinet.pref.tochigi.lg.jp/noudai/

この記事を書いた人

「住食人」がテーマのインタビューライター。今は埼玉県在住だが、以前栃木県に住んでいたことがあり、今でも頻繁に足を運ぶほど栃木愛が強い。2019年7月からカジルに参加。趣味はダイエット(遂にコミットしてきた)、好きなものは人とお酒。
https://www.instagram.com/an_sayu/