こんにちは、カジル編集部です。
みなさんは農業に対してどんなイメージがありますか?最近は「若者の農業離れ」という文字を見ることが多く、農業というと中高年の方が昔ながらの方法で頑張っているイメージの方も多いかもしれません。
しかし一方では若くから農業に勤しむ農家さんもいます。今回は、なんと10代という若さ(!)でニラとアスパラガスの栽培を継いだ佐藤潤一さんにインタビューの機会をいただきました。
本日お世話になる農家さん
つくる人:佐藤潤一さん
つくっているもの:アスパラガス、ニラ
佐藤さんはアスパラガスのハウス栽培に全国最大級の広い圃場を持ち、味も最高級品と名高い農家さんです。
大学の推薦を辞退してでも農業がやりたかった
:佐藤さん今日はよろしくお願いします。
:こちらこそよろしくお願いします。
:10代で農業を始めたと聞いて驚いたのですが…
:本当ですよ。高校卒業後すぐ、18才で祖父のあとを継ぎました。
:なんと!18才という若さ、進学や就職などの選択肢がある中なぜ農業を継ごうと?
:子供の時から農業はずっと身近なものでした。両親は企業に勤めていたので、学校が終わってじいちゃんばあちゃんが農作業してる場をよく見ていて。
:子供の時から農家になろうと思ってたんですか?
:ずっと柔道をやっていたので、刑務官や警察官になろうかな…なんて考えていました。大学も柔道の推薦で決まっていたんです。でも、いざ進路選択の時期になったとき、大学で自分がやりたいことができるか?って立ち止まったんですよ。ちょうど、祖父も農家を続けるのが難しい年齢になっていたので継ぐことにしました。
:思い切りましたね。
:子供の時から人から指示を聞いて仕事するよりも1人で黙々と作業をしたり考えるのが好きで。ずっと身近にあった農業を自分の力でやってみるのも楽しそうかなと思ったんです。
:かなり大人っぽい思考の18才だったんですね!
農業は苦労の連続だったが…
:佐藤さん一家はどのくらい農家をされているんですか?
:曽祖父、祖父、そして私で3代目です。
:アスパラガスは誰が始めたんですか?
:アスパラガスとニラの栽培は先代の祖父が始めました。
:いきなり広い土地を継いでびっくりですよね…
:いえ、継いだ時点では50arでした。私が継いでから230arまで拡大したんです。
:まだ20代ですよね?!佐藤さん、やり手すぎます…
:でも本当に苦労ばかりしました。
:どんなことがありましたか?
:アスパラガスはすごくデリケートな野菜で、湿度の管理などが大変なんです。ずっと病気や雑草との戦いでした。少しでも油断するとダイレクトにツケが帰ってくるようなイメージです。実は、始めて最初7年くらい全く収入がありませんでした。
:えっ、収入がないとは?
:入ってきたお金の分だけ、設備の費用に消えて行ってしまったんです。
:それは大変でしたね…
:収量を落とすわけにも行かないですし、とにかく働きました。普通の人の2倍くらいは働いてたんじゃないでしょうか…休む暇もなかったですね。
:ご家族がいるとはいえ、企業のように誰かが助けてくれることもないと思うんですが…佐藤さんは何のためにそこまで頑張れたのですか?
:やっぱり自分のためです。本当やりたいことだからこそ頑張れました。数えきれないくらい辛いことがありましたけど…やってみたことがぴったりうまくいくと、すっごく気持ちが良くて!だから農家をついで悔いはありません!
:素晴らしいです…!
アスパラガスとニラ、なぜ両方つくる?
:デリケートなアスパラガスに振り回されながらもストイックに続けて来られたんですね。
:はい。
:広大な土地を管理して大変だと思うのですが、ニラもずっと続けていらっしゃるんですか?
:はい、自分は経営も好きでして。
:経営?
:農業は季節ごとに仕事が変わります。パートさんの手が欠かせない繁忙期もあれば、収穫などが落ち着いて雇う人数を減らしたい時期もあるんです。でも、働く側は季節関係なく安定して仕事が欲しいじゃないですか?
:おっしゃる通りです。
:そこでアスパラガスとニラの組み合わせの登場です。アスパラガス終わればニラ、ニラが終わればアスパラガス…というように安定して人の手が欲しくなります。つまり、従業員の方が年間通して働くことができるんです!
:!!なるほど、目からウロコですね!
:質良く、たくさんつくるためには人の手が大切なんです。働く人の手があってのおいしいアスパラガス、おいしいニラなんです。だからこそシフトも対価も、働く人の目線に立って考えるようにしてます。
:佐藤さんのところで働きたくなりました…
:そんなこと言わないでカジル運営頑張ってください笑
:はい笑
変化を恐れない次世代の農業を
:佐藤さんが目指してる農業・経営にはどんな思いがあるのでしょうか。
:時代に適した農業です。
:具体的にはどのようなことでしょうか?
:農業のプロである以上、僕たちはこだわった良いものを届けたい。そこには効率が必須なんです。技術が進歩して自動化できるようになったものは自動化して効率化します。
:なるほど。
:効率化するほど必要なところに手間をかけられるようになるんです。
:合理的ですね!
:その通り。消費者や社会の変化にしっかり適応していくのがこれからの農業です。先人の築いてきた歴史の上に今の農業があるからこそ、時代の進化に遅れないよう農家も進化していくべきだと僕は考えます。
:佐藤さんのように頑張る農家さんをカジルも精一杯応援していきたいと思います。佐藤さん、今日はありがとうございました!
:お疲れ様でした!
編集後期
おいしいものをつくるために栽培だけでなく経営もこだわり、時代の流れにも目を向けて努力する佐藤さんの姿に尊敬の意を抱きました。農家としても経営者としてもストイックな佐藤さん。これからも次世代の農業のトップランナーとして活躍していただきたいですね。作業場には、真剣に選別を行うパートさんたちの心地よい沈黙が流れていました。