カジルライターの小百合です。3月のイベントと言えば、ひな祭りにホワイトデー!女性がウキウキする月、女性が一層輝く月ですよね♪(あれ?私、夫からホワイトデーもらって……ない……)実はカジリストの中にも、輝いている女性農家さんは沢山いるんです!そこで今回は、ともに女性農家でママ友同士でもある、寶示戸さんと難波さんにお声がけ。農業を始めた経緯や就農当初の苦労、今の喜びなどについて対談していただきました!
寶示戸さん、難波さん、はじめまして!今日はよろしくお願いいたします!
よろしくお願いしま~す!
よろしくお願いしま~す!

お2人はどんな作物を育てているんですか?
パセリ、水菜、スナックエンドウ、ナス、白菜です。今の時期(4月ごろ)は野菜の苗、秋は花のパンジーとビオラも育てています。
うちは、いちごを育てています。
ふむふむ。お2人はいつからお友達なんですか?
もともと子どもの保育園が同じで、互いの存在は知っていたんです。ある時たまたま、若手農業女子向けの講座があって、それに私が難波さんを誘ってみたんです。あれは2011年だったかな。
そうだったね。もう9年来の付き合いです。

撮影場所:寶示戸さんの農園
それぞれの経緯で農家に転身!
この寶示戸さんの農園は、いつ始まったんですか?
1000年前くらいです(サラリ)。

えっ……!?!?!?(驚)
えっ……!?!?!?(驚)
主人が32代目で、私は寶示戸家に入った嫁です。さっき主人から、先祖について詳細が送られてきたんですが……。
(以下、寶示戸さんのスマホ画面より)
~西暦940年頃、藤原秀郷と供に、平将門の追討の為に都から来る。小山氏の家老や、芳賀郡を治めていた先祖もいて、芳賀町の芳志戸はその名残らしい。そして、いまの場所に移って来て開拓。今に至る~
(ひいいいいいい!いきなりスゴイのキタ……!)
し、知らなかった……!ビックリした~!
ごっ、ご自身の農業歴は何年ですか?
主人と結婚したのは2003年ですが、私は結婚後すぐ就農したわけではなく、しばらくOLを続けていたんです。本格的に就農したのは2010年ごろなので、農業歴は10年くらいですね。
OLとは全く違う農家に転身することに、迷いや不安はなかったんですか?
迷いよりは、主人と一緒に働けることに希望を感じていましたね。自分のペースで楽しくやっていけるかなと。OL時代は子どもたちとの時間も取れなかったので、その面でも家に入ったほうがいいかなと思っていたんです。
実際に始めたら、当然いちから色々と覚えないといけなくて、大変な面もありましたね。お義父さん、お義母さん、主人、パートさんの仕事を見様見真似でやってみて、分からないことを聞きながら覚えました。
難波さんはどういう経緯でしたか?
うちは、2004年に農業を始めるために埼玉から野木町に移り住んだんです。なので、農業歴は16年ですね。もともと主人は飲食系、私は事務OLだったのですが、結婚するときに、主人が「農業やりたいんだけど、やってもいいかな?食べられなくなったら他の仕事をして稼ぐから!」と言ってきて(笑)。どうやら、大学のゼミで環境と法律を絡めたことを学んで、循環する仕組みの農業に興味があったらしいんです。

結婚と同時に!作物の中でもいちごを選んだのは何故ですか?
いちごは、面積のわりに収入が得られるかもしれないと思ったんです。あと、単純に私がいちご好きで(笑)。それで、夫が結婚前に1年半、下野市のいちご農家で勉強させていただいて、たまたま結婚のタイミングで野木町の空き農家物件を紹介してもらえたんです。
それはラッキー!ご主人の情熱が運命を引き寄せた感、ありますね!

女性農家、就農当時の苦労を語る
でも難波さん、事務OLから農家に転身って、最初は相当なご苦労があったんじゃないですか?
はい。とりあえず重労働だなって……。土とか、すごく重いんですよ!
うん……。一袋10キロとかあるもんね……。
そう、それを運ぶのがもう大変。あとは、しゃがんでの作業が多いので、カラダが辛い(笑)。最初は、同じ体勢での作業が1時間もできなくて。特に腰がやられましたね。
そうそう!スゴイよね。農業ってこんなに腰使うんだ……って。しばらく同じ姿勢で作業した後は、カラダが固まってしまって、一気に立ち上がれない(笑)。
そりゃ~おばあちゃんは腰曲がるわけだ~!って思いましたよ。苦労してビニールハウスにビニールをかけても、風に飛ばされたりするし……(涙)。
分かる~~~(涙)!

“カラダ辛いよ問題”ですね……。精神的な苦労もありましたか?
家族と仕事すると、気をつかう(笑)。あと、プライベートと仕事がずっと続いている。
それはあるね。仕事とプライベートの切り替えが難しい。農業って、仕事にキリがないんですよ。いつまででもできちゃう。仕事のあとには家事や子どもたちの世話があるので、自分で区切りをつけてやらないと。そのリズムを自分でつくって行くまでは、大変だったかな~。
それと、平日は子どもを保育園に預けていたので、送り迎え以外は仕事に集中できるんですけど、土日は子どもたちの面倒も見つつ合間に仕事で。当時はまだ小さかったので、それが一番大変だったところかな。
心身ともに試練があったのですね~。就農してから初めて知って驚いたことはありましたか?
私、スーパーに並んでいる野菜って、機械で包装していると思っていたんですよ。でも、実際は手作業でやっていると知って、すごく驚きました!こんなに手間がかかっているんだなって。あと、ピーマンの種って、黒いと思っていたんですよ!実は新鮮なピーマンの種は白いと知って、あれは衝撃でしたね(笑)。

農業歴10年・16年。変化した悩みと、見つけたやりがい
年月が経った今、悩みや苦労のタネは変わりましたか?
そうですね、まずは気象問題。ここ数年、気象状況が厳しいですが、気象に作物を合わせるのが大変です。冬はいくら寒くても、暖房を入れれば何とかなりますが、夏の猛暑は困りますね。ハウスに遮光をして、なるべく涼しくしたり……。
夏場のハウスは、40度超えるもんね……。
うん……。環境制御やAIで、ハウス内の温度が自動で管理できるシステムがあるんですよ。それが欲しいですね。
それは取り入れたいよね!
あとは、段々老化を実感してきているので(笑)、年をとってもずっと続けていけるように、省力化できる設備が欲しいな。
うちは、主人の父と母も一緒にやっているんですけど、いつまでも一緒にはできないので、世代交代のことが気になります。「自分たちも、もっと勉強していかないと!」と思いますね。今は、ハウスの温度や水の管理は両親が状況をみて判断していますが、それを自分たちでできるようになるためには、どうしたらいいんだろうと。やっぱり、AIに頼るしかないのかな?

実際に目で見てまわらないと、「ここに虫が出ている」とか「ここに病気が出ている」とか、気づかないんだよね。それは、AIじゃ難しいのかな。
AIにはできないこともあるけれど、導入したらラクになることも多いんですね。なぜ、今すぐに入れようとしないんですか?何か障害がありますか?
それは金銭面ですね。資金があれば、今すぐにでも入れたい。
あとは、タイミングもあるかな。ハウスを建てかえる時にしようかなとか。
ふむふむ。他にもお悩みありますか?
休みが欲しい……(切実)。
うん、休みが欲しい……。農家って、休みは決まっていないので、用事のある日に向けて自分で仕事を調節するんです。AIや環境制御があれば、時間に余裕ができて、もっと休めるんじゃないかなと思いますね!

どなたか、今すぐお2人にAIを!!でも、苦労も多い一方で、やりがいも大きいですよね?
もちろんです!うちの水菜を食べた方が「寶示戸さんの水菜は、他の水菜と違うんだよね」と言ってくれることが多くて、嬉しいです。一般的な水菜に比べて、うちのは茎が細いんです。だからサラダ向きなのかな。
うんうん。水菜って、スーパーで買うとたまに苦みとかエグみがあるんですよ。寶示戸さんの水菜はそれがないから、サラダにも良いし、そのままでもポリポリいけますね。私のやりがいは、小さかった作物が育った時の喜び。収穫する時に思わず「がんばったね~!」と、作物に話しかけてしまいます(笑)。
あと、農業を始めてからは規則正しい生活をするようになって、カラダが健康になりました。以前は常に口内炎があるし、体内の巡りも悪かったんですけど。あ、今はもう、同じ体勢で1時間以上作業できるようになりましたよ(笑)。

パッションとフットワークの軽さで、加工品にも挑戦!

こちらの加工品、かわいいですね!寶示戸さんのパセリドレッシングにピクルス、難波さんのいちごジャム。デザインはどなたがされたんですか?
芸術大学の学生さんにつくってもらったんです。ターゲットは女性なので「女子ウケするデザインで、かわいさ重視でお願いします」とオーダーして(笑)。実際に買って下さっている方は、ねらい通り女性が多いですね。野木のセブンイレブン、ろまんちっく村のあおぞら館、栃木市アンテナショップのコエド市場、東京スカイツリーのとちまるショップに置かせてもらっています。
野木町のふるさと納税の返礼品にもなっているよね。
そうだ、そうそう。それで『野木町ブランド』に認定してもらったんです。
え~スゴイ!ご自身で売り込んだんですか?
まずは、このドレッシングを色んな人に知ってもらおうと、赤字覚悟で色んな人に配りまくったんです!アピールしないと知ってもらえないし、手に取ってもらえないので。主人経由で消防団の人にも配ったり、ママ友に配ったりしました。偶然、消防団の中に役場に勤めている方がいて、そのツテで町長さんが食べてくれるようになったんです!

なんと理想的なマーケティング!寶示戸さんのフットワークの軽さ、ママ友や女性の伝搬速度、口コミ力が掛け合わさって、良い結果につながったんですね!農業女子パワーおそるべし!
おかげさまで、売れ行きも好調です。使ってくれた方が「アレにかけたらおいしかったよ!」と、新たな食べ方を教えてくれるんですよ。それを私がSNSで紹介しています。この商品をつくってみて、本当に良かったですね。
私のいちごジャムは、趣味でつくって知り合いにお配りしているのですが、実は寶示戸さんが「つくってみなよ!」とすすめてくれたんです。シーズンオフに収穫したいちごを大量に冷凍していたのですが、使い道が分からなくて困っていたんです。
それを聞いて「もったいないよ!何かつくりなよ!」って(笑)。それで、うちの加工品をつくってくれている会社さんを紹介したんだよね。

寶示戸さんのパワー、ハンパないですね!(笑)
農業は大変だけど楽しい!女性にはメリットも

これから挑戦したいことはありますか?
新しい品種にも挑戦してみたいですね。
もうちょっと、時間的に余裕のある作付けをできるように改善していきたいです。子どもが「将来は継ぐよ」と言ってくれているので、この農園を守っていかないとと思っていますね。
これから農業を始めたい人(特に女性)に、伝えたいことはありますか?
農業って、どうしてもキツイというイメージがありますよね。確かにそれは本当だけど、収穫の喜びとか、自分がつくったものをまわりの方が食べてくれる喜びがあります。ぜひ、それを色んな方に知って欲しいですね。
うん。会社勤めと違って、子どもを近くで見ながら仕事ができるメリットもある。

こうやって農業女子仲間がいるので、心強いですよ。農業は悩みが特殊だけど、同じ境遇の仲間がいるので、困ったら相談したり、一緒にご飯を食べに行ったりしています。それが嬉しいし、楽しいよね!
それは本当にそうだね。自分自身も新鮮な野菜が食べられますし、健康にもなれますよ!
ありがとうございます!せっかくの機会なので、最後にお互いにメッセージを交換してください(笑)。
えっ(照)。寶示戸さんって、本当にリーダーシップがあるんです。今もすでに若手農業女子を引っ張っていってくれる存在だし、これからもそうして欲しいですね。

嬉しいな~。私からのメッセージは……。もっと遊ぼ~!(笑)
そのためにも、AI化ですね!(笑)
「【インタビュー対談】女性農家の苦労とやりがいを聞いてみた」をお届けしました。いかがでしたか?高め合う仕事仲間であり、支え合う良き友人でもあるお2人。未経験から農業の世界に飛び込んだ苦労を乗り越え、今は大きなやりがいを感じていました。これからも体に気をつけて、農業を続けてくださいね。寶示戸さん、難波さん、ありがとうございました!
この記事を書いた人

「住・食・人」がテーマのライター、インタビュアー。今は埼玉県在住だが、以前栃木県に住んでいたことがあり、今でも頻繁に足を運ぶほど栃木愛が強い。趣味はヨガ、ダイエット(コミット中)、料理(修行中)。人とお酒が大好物。農家さんの様々な面を伝えるため、取材を通して農業について勉強中。
Instagram:@an_sayu