映画『もののけ姫』のアシタカを目指し、化学肥料や農薬を使わない農業をしている早乙女さん。「なぜアシタカになりたいの?」「なんでアシタカなの?」「早乙女さんに一体何があったの?」疑問に思ったカジルは、早乙女さんに直撃取材!そこには、予想を上回る深~い理由があったのでございます……。

生きることは、食べること

──パカッ!パカッ!パカッ!

はっ……!この足音は……ヤックル!?(※)

──早乙女さんっ!驚いて飛んできてしまいましたよ!「早乙女さんがアシタカを目指している」って、栃木県中でウワサになっています!

(ちがった……カジルの皆さんだった……)す、すみません。驚かせてしまって……。

(※ヤックルとは、アシタカの相棒で架空の動物のことである。)

──うう~ん。アシタカと言えば、1997年に公開された、スタジオジブリの名作映画『もののけ姫』の主人公……。内に情熱を秘めつつ温和な性格で、しかもジブリ至上最高のイケメンとなれば、早乙女さんがアシタカにあこがれる気持ちも分かりますよ♪(ウインク)

そんなミーハーな理由で、アシタカを目指しているワケじゃないんですよ~(笑)。アシタカって、自然界と人間界を結びつける存在なんです!

〽 はァりつめたァ~~~~ゆみのォ~~♪

(ここからは、お馴染みの歌をBGMにお楽しみください)

農業は人間がやるものですが、自然を上手く取り入れないとできませんよね。私たち農家は、自然を守ることと人間社会をつくること、その両方を考えなくてはいけないんです。だから、自然界と人間界の間に立っているアシタカは、私にとってまさに理想的な存在!アシタカのように、自然との共存を模索していきたいんです……。

〽月のひかりにィ~~~ざわァめェくゥ~~~♪

(早乙女さんが農業をはじめた背景には、こんな深い理由があったのでございます……)

私はもともと壬生出身なんですが、以前は東京で看護師をしていました。混合個室というVIPルームエリアの担当で、診療だけでなく、日常生活や身のまわりのお手伝いもしていました。

看護師として働く中では、生きることについて考える機会が沢山ありました。患者さんは高齢の方や終末期の方が多く、口から物が食べられなくなって“胃ろう”から栄養をとる方が多かったんです。もちろん、生きるためには必要な措置なのですが、正直お世話をしながら複雑な気持ちになることもありました。「生きるためには食べることが大事だ。そして食べる物も大事だ!」と、食の重要性を強く感じていたんです。

看護師時代の早乙女さん

祖父母は農家なので、幼いころから農業は身近な存在でした。いつしか私の中で食への思いと農業が繋がり、「農業を通して人々の健康な生活を支えていきたい」と、転身を決意。壬生の有機農家さんで2年間勉強させていただいた後、2018年8月に独立したんです。

実は歴女!ボランティアにも精力的

――そんな背景があったんですね。先ほどは、変な足音で登場してすみませんでした……。早乙女さんって、とても真面目な方なんですね(涙

(やっぱりヤックル意識の登場だったんだ……。)ん~、確かに私、真面目過ぎるところはあるかもしれません。友人からは「面倒くさがりなのにちゃんとやるよね」と言われます(笑)。

――農業とアシタカ以外で興味のあるものはありますか?

歴史が大好きなんです!看護師時代は、頻繁に戦跡・お城・お寺に行っていました。農業をはじめてからはあまり休みが取れないので、もっぱら家で歴史小説や歴史解説書を読んでいます。

趣味が高じて、壬生町の観光ボランティアガイドをしています。「自分の地元の歴史も知っておきたいな。皆にも伝えていきたいな」と思って。年に4回程度、団体のお客様と一緒に、壬生町の城跡・お寺・神社などの歴史的な見どころを回っています。

その他にも、「つなぐ輪みぶ」という壬生町の高齢者支援ボランティアにも参加していて、通院のお手伝い、家の片付け、庭の草取りなど、高齢者の身のまわりのお手伝いをしています。看護の仕事は辞めたものの、「看護の仕事に繋がりがあることを続けていきたい」という気持ちがあるんですよね。多いときで週1回程度出動していますが、利用者さんから「とっても助かるよ」と言っていただけることが多く、やりがいを感じています。

健康と環境にやさしい農法を貫く

――ずいぶん色んな野菜を育てているんですね!

季節や旬を大事にしたいので、少量多品目、年間約30種類の野菜を栽培しています。リーフレタス、ラディッシュ、小松菜、人参、かぶ、ブロッコリー、キャベツ、里芋、落花生、枝豆、ナス、ピーマン、ズッキーニなどです。化学肥料と農薬を使用しないことがこだわりです。

今は少品目の野菜を大規模に作っている農家が多いですが、昔の農家は季節ごとに色々な野菜を作っていたんです。私はそういった“産業的ではない農業”を大事にしたいんですよね。単純に「色々な野菜を作った方が楽しい」という気持ちもありますけれど(笑)。

――なぜ、有機質肥料と無農薬にこだわっているのですか?

健康を重視するなら、化学的に合成された肥料・農薬は使うべきではないと考えているからです。それに、人間が生きていくには自然が必要不可欠。どんなに科学技術が発展しても、人間は自然との共生なしには生きていけませんから、私は自然環境を大切にしながら農業をしたいんです。そうして、皆さんに喜んでいただける野菜を提供しながら、自然と共生することの大切さも伝えていけたら嬉しいですね。

――使用している有機質肥料は、どのようなものですか?

天然物質由来のもので、主に鶏糞・牛糞・菜種油粕・米ぬかなどです。鶏糞と牛糞は、近くの養鶏場や酪農家の方が堆肥として作っているものを直接購入しています。米ぬかは近くの米農家さんからいただいていて、菜種油粕はうちで栽培している菜種から油を搾った粕です。循環型農業ですね。

――農薬を使わない代わりに、なにか工夫をしていますか?

作付け時期を調整したり、輪作・間作などの栽培管理をしたりしています。その他にも、マルチシートや防虫ネットなどを使用したり、必要に応じて食酢など自然由来のものを使用したりして、病害虫の対策をしています。

「共に生きよう」自然との共生を模索する

――農業はどんなところが難しいですか?

自然相手のところですね。特にうちは農薬を使っていないので、“いかに自然な形で虫を防ぎながら、出荷基準を満たす商品をつくるか”が難しいです。基準に満たないものはB品として値段を下げて出荷したり、直接販売したりするなど工夫しています。

楽しいことも沢山あります。一番は、自然の中で自然を感じながら仕事ができることですね。季節の虫や鳥の出現など、四季の変化に気づく感覚が研ぎ澄まされましたし、規則正しい生活になったので体もラクになりました。

お客様から「美味しかった」「他とは味が違う」と言っていただけることや、リピートして買っていただけることも嬉しいです。有機野菜は味が濃く、自然の力を感じられるんだと思いますね。

――苦労もありつつ、充実した農業ライフを送っているんですね。これからの展望や目標はありますか?

「自然エネルギー×農業」など、環境保護活動と合わせた農業を展開したいです。福島の原発事故を見て、エネルギーのつくられ方について真剣に考えるようになりました。畑の副産物をエネルギーに変えられたらと思っているので、科学的な知識を持っている方やエネルギーの専門家と繋がれたら嬉しいですね。

――早乙女さん、すでにアシタカが嫉妬するレベルですよ!これからますます楽しみです。最後に、ここまで読んでくださった皆さんにメッセージをお願いします。

農薬や化学を使った産業的な農業は人間主体なので、自然との共存が出来ず、いずれ必ず弊害が出てきます。スーパーで野菜を見たときに、自然環境のことを少しでも思い出してもらえたら良いですね。そして、アシタカの名言「共に生きよう」も思い出してください(笑)。食の在り方について考えることは、私たちの人生の質を豊かにすることにも繋がるはずですから。

私は、小さな町の片隅で、日々自然の恵みに感謝しながら農業に勤しんでいます。多くの農家がある中で、何かのきっかけで皆さんに表町ファームの野菜を食べていただけたら嬉しいです!

〽もののォ~けェ~たちィ~だけェェ~~♪もののオ~けェ~たちィ~、だ・けェ~~……。

取材を終えて

人間が生きるためには良い食が必要、良い食のためには良い農業が必要、良い農業のためには自然と共に生きることが必要──。

そんな早乙女さんの信念のもとで育った表町ファームの無農薬野菜は、早乙女さんのお人柄のように力強くて優しい味がしたのでございます……。

志高き壬生町のアシタカに、幸あれ!!

(パカッ、パカッ、パカッ……)

~完~

カジリスト

早乙女 春香

表町ファーム / 下都賀郡壬生町

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